◇ 女子生徒 薄物まとひ 化粧して 吾が恋ひ初めし 夏がまた来る ◇
2016年7月のブログ記事
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◇ 仮装して 踊るやからの多くして 本当の人魚 ゐるも気づかず ◇
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◇ 泉湧く 辺りに獣の 気配して われ警戒の 咳払ひする ◇
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◇ それぞれに 夏野はありて 吾うちに ある夏野には 一本の白樺 ◇
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◇ キツツキの 怒り貌して 木をツツク その横貌に 見覚えのあり ◇
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◇ 炎天下 羽ばたく鳥の 厳かに しつかりせよと 吾を扇ぎゆく ◇
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◇ ザーと行き またザーと来る 雨の中 人もけものも 蘇りつつ ◇
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◇ 森の奥 くぐもり声で 啼く鳥の 清水のありか 伝へむとして ◇
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◇ 砂浜に 影を落として 行く人の 過ぎし後には 光る足跡 ◇
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◇ 制空権 トンボ持つとは 思へねど 架線の上下を 自在に翔る ◇
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◇ 吾がうちに 去年の灯の 暗く燃え そこを目がけて 蛍舞ひくる ◇
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◇ 人界の 花火に熊は 我を撃たれ 麓を逃れ 山の奥へと ◇
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◇ 誤解して 帰省してをり 親知らず 列車乗り継ぎ 闇の連綿 ◇
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◇ 帰省子の 必死を理解 する世代 遠き故郷を 手繰り寄せむと ◇
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◇ 弾力も 固さもなしに さくさくと たださくさくと 胡瓜噛むなり ◇
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◇ 翡翠や 一枝に山と 川鎮む カメラや人は 問題とせず ◇
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◇ 太陽が 向日葵に 身を移した 映したのではなく 身を移した 一頃は菜の花とか タンポポだったが 今は向日葵で満足している ◇
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◇ 青芒 保護色バッタの 避難場所 さう思ふ矢先 猫が横切る ◇
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◇ 向日葵と 葵が護る 過疎の村 さらに寂びれば 熊が来て棲む ◇
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◇ 海真青 沖行く船は 白うして 見送る丘は 緑なりけり ◇
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◇ 起き抜けに 木琴叩く 女の子 窓の下には スズラン並び ◇
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◇ 蕗の葉の 下に雨避く 雨蛙 怠惰の咎め やや怯えつつ ◇
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◇ 海水着 つけて登校 する生徒 訝る教師 頷く教師 ◇
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◇ 広場には 日の下蟻は 動きをり 厭かずに動く そを見る男 ◇
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◇ 病む馬の そとでを拒む 炎天下 熱中症と 獣医の見立て ◇
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◇ 草茂る 中より海と 船を見る 船白うして 他は青緑 ◇
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◇ 渡り来て 日本各地を めぐり行く 故郷持たざる ジプシー女 ◇
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◇ 路傍にて 店を広げる 外〈と〉つ国の 女さし出す 手製の飾り ◇
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◇ 黒揚羽 地を打つ影の なほ黒し 岩に留まれば 黒印となり ◇
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◇ 蟻の径 せつせせつせと すれ違ふ 相殺されて 静けさもあり ◇
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◇ 来るや否や 鳴きだす蝉に 飼猫の 塀を見上げて ただ唖然とす ◇
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◇ 水澄し 水を澄ませて 幾めぐり 細脚疲れて 休むのはいつ ◇
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◇ 七つ星 天道虫を ポケツトに しまつて急ぐ 下校の児童 ◇
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◇ 追ひゆけば 夜空の星と なる蛍 かくして儚き いのちは永久〈とは〉に ◇
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◇ 一蝉の 鳴きつつドアに 激突し 気絶して果つ あたらいのちを ◇
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◇ まったく取り得のない 我が町に 平和の使節の 虹が迫った 願わくば 跨いで行ってしまわないことを 祈りに近い思いでいると 町の中心辺りに 片脚を下してくれた 脚の形が折れ線グラフのようで 虹の滑らかさを欠いていたが それだけ私の町を 哀れんでくれたからなのだろう ◇
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◇ 虹さして 尺取り虫と いふ子あり なるほど虹に 虫といふ字が ◇
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◇ 木立の下を行くと けっこう夏落葉が降ってくる 下校の小学児が わざわざ夏落葉を踏んで行く かさっと鳴って それでおしまい 手に汗握る電子機器の 戦いにはない 解放感 自然の遊び 今も子供の声が弾けて 一枚の夏落葉を踏む権利を獲得した ◇
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◇ ベンチの緑陰に 帽子を置いて 立ち去った男がいる 場所を確保するためだったのか うっかり忘れてしまったのか 青春の記念とするつもりだったのか 誰にも分らない 男は二度と現れず その帽子も今はない ◇
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◇ 山女棲む 領域の空 狭く深く 帰れぬままに 山女棲む川は 吾が中にあり ◇
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◇ 押し出され 戻る苦闘の 燕の子 十日後には 巣は羽毛のみ ◇
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◇ この湖畔 旧き館の 西日浴び しば啼く鳥の 声の高さよ ◇
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◇ 人喰ひの 熊は撃たれて 波白し 湖畔さまよふ 二頭の子熊 ◇ 子熊らの 人のテントを 覗きゆく 母探すさま 哀れなるかな ◇
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◇ キツツキが 赤い頭を振り立て 木をつついている よこす視線は いつになくきつく 何故このキツツキは 怒っているのだろう あれこれ考えていると 今朝熊が一頭 撃たれたことに 思い至った キツツキの名は ークマゲラー ◇
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◇ この湖畔 銃声ひとつ木霊して 人喰ひ熊は 今朝撃たれけり ◇
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◇ 青草に 犬舌染めて 蛍追ふ ◇ 庭に来て 鳥ニワトリと 競ひ鳴き ◇ 羊鳴けば 牛追ひかける 牧歌かな ◇ 夏雲の 陰はオアシス 雲雀かな ◇ ゆつたりと ゆく白雲の 陰に乗り ◇