korekarayukumitiのブログ

長きにわたり探してきた道は、天から降りてくる梯子を
一歩一歩上っていくことだった。

2016年6月のブログ記事

  • 蛙の唄

    ◇蛙の唄 画家が池の畔で絵を描いていた。 そこに茶褐色の蛙が一匹、池から這い出してきて、画家の斜め後ろから、珍しそうに絵に見入っていた。 画家はパレットに出した赤い絵具が余っていたので、そこから絵筆にとって、蛙の背中に塗りはじめた。 画家が描いているのはアクリル画である。アクリル絵具は乾きが早く、... 続きをみる

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  • 土用鰻

    ◇土用鰻 毎年土用のこの時期になると、 鰻を食べて、内部武装する男がいる。 併せて酒を食らえば、完全武装となる。 内部の武装はこれでよしとして、 残るは外部の武装だ。 昔の侍のように、 帯刀するわけにもいかない。 ギャングのようにピストルを持つこともできない。 そこで色の濃いサングラスをかけ、 黒... 続きをみる

  • 営業中の店

    ◇営業中の店 日覆いの中は暗く、 訝しいので、 入らず素通りした。 帰りも同じで、 さらに内部の闇が、 濃くなっていた。 光っているのは、 水を撒いたせいか。 そこに周りの何かが映り込んで、 血のように赤かった。 〈あれは血しぶきだ!〉 そんな声が彼の中でわだかまり 広がっていった ほぼ一年ぶりに... 続きをみる

  • 郊外の家

    ◇西日の当る家◇ 郊外の家に 強く西日が射して 片陰に 美しい猫が 澄まして 端座している   ◇