蝉に気絶した猫
庭のブナの木に蝉が来て鳴きだした。ブナの木に留まるやいなや鳴きだすという唐突さに、木の近くにいた猫がびっくり仰天して、気絶して仰向けに倒れた。
気絶して起きない猫に、この家の老人が如露の水をかけた。猫は冷たい水にまたまた驚いて、完全に目が覚めた。そして体をぶるるんぶるぶると振るわせた。そのときできた霧状の水に虹がかかった。虹を見ても猫は驚かない。しかし今度は蝉がたまげて、鳴き声をさらに張り上げたので、猫は再び気絶してはならないと、家を目指して逃げ込んで行った。
老人は慌てて猫を追い、弱虫猫の根性を叩きなおしてやらねばと、決意の程はわかったが、今度は猫が逆手に出る心配。
最近老人になついた野生のリスがいて、そのリスに手を出されては大変と、猫をいさめるのは中止した。すると老人は腹の虫が収まらなくなり、自分の腹に詰める食べ物はないかと、冷蔵庫を開けて中を覗きこむ。
おわり