◇ 雪嶺は 耀く下に 陰を延べ 陰の中には 人と獣が ◇
2016年12月のブログ記事
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◇ 木枯しを 逃れて一葉 玄関に 魚のごとくに 鰓呼吸せり ◇
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◇ 冬鴎 湧く荒海を 母として 生まれたからは 生きねばならず ◇
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◇ 頭中に 冬日埋めて こもりがち やがて芽生ゆる 春を待ちつつ ◇
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◇ 兎跳ぶ 飛ぶより他に 道なくて 冬野駆ければ 足跡が道 ◇
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◇ 雪嶺の 見えざる淡き 光かな ナキウサギ啼く 幽かな声で ◇
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◇ 雪原の 白鳥生くる 気配のみ 小山もなさず 平地でもなく ◇
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◇ 盗人の ごと来るメシア きのふけふ 気づかずをれば 冷や飯を食ふ ◇
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◇ 大晦日 めぐり来る度 思へらく ふるさと遠く 想ふものなり ◇
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◇ 雪山に 光溢れて ひと気なし 神社ばかりに 人だかりして ◇
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◇ 雪降りの 囲ひの外に 立つ雌牛 乳与へても 人の冷たさ ◇
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◇ 人界の 孔雀涼しき 顔をして 落葉蹴散らし 歩みを進む ◇
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◇ 落葉焚き 木の実はいくつ 弾くかな 予想より多く 八個弾けり ◇
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◇ 夕暮れて 一つの焚火 熾りゆく いのちの灯 掲げるごとし ◇
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◇ 埋もれて 深雪を掻く 光へと 懐かしきかな 労働讃歌 ◇
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◇ 毛皮には 種々動物の 貌ありて 狐と貂が 仲良く並ぶ ◇
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◇ 木枯しに 雀ふくるる ばかりなり 窓開け呼べど 伝はらず逃ぐ ◇
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◇ サンタにつく 吾雇はれの アルバイト サンタも同じ 哀れなる身の ◇
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◇ 枝打ちを するほど細る 吾が身にて あれもいらない これもいらない ◇
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◇ バス停に 猫も来てをり 冬ぬくし 暖房が効き 人も優しく ◇
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◇ 寒月の 木の幹に坐す 猫の目に かかりてをれば 貌を逸らさず ◇
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◇ 殉ずると いへばサンタク ロースかな 無理して笑ひ 無理して我慢 ◇
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◇ 冬の鶴 羽搏きすれば 鳥逃げる 大き力を 翼に感じ ◇
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◇ トンネルを 兎むかふの 光へと 駆けてゆくなり 暗闇のなか ◇
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◇ 金魚には 夕日見せるな 燃え尽きぬ 路地を出るとき もつとも怖し ◇
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◇ 凧天を 引き下ろさんと して昇る この強引は 信仰に似て ◇
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◇ 凧を上ぐ 思ひ染めにし 娘(こ)の上に 願ひは天に 委ね待つのみ ◇
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◇ 凧切れて 放蕩息子 帰るまじ それもまたよし 親と子は別 ◇
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◇ 霜柱 従順ならぬ ものありて すべてを踏みて 安らぎを知る ◇
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◇ 大き体 風にわたして 鶴がゆく 肩を並べて 三羽の鶴が ◇
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◇ いかのぼり 糸切り飛ぶは たがもとへ 消えし風船 探す旅立ち ◇
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◇ 研ぎ澄まし 一対一の 岩魚釣り 川上の音は 人か羆か ◇
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◇ 枝の雪 落とせば冬木 立つばかり 雪化粧とは よくぞ言ひたる ◇
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◇ 執心す 湯豆腐箸に 掬ふべく そのためにある 匙とも知らず ◇
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◇ 視界消し 海山ともに 冬ごもり 一面の雪 一面の雲 ◇
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◇ 自然薯や 腰を伸ばして 深呼吸 発見よりも 掘る難しさ ◇
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◇ 廃線の 鉄路に狐 正座して 真つ直ぐの道 示しをるらし ◇
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◇ 枯野伸ぶ 寝床もたざる いきものへ 凍てつく荒野を 彷徨ふものへ ◇
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◇ 枯草に 俯せて見る 沖の船 一船輝き 視野を横切る ◇
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◇ 吾が凧に そつと寄り添ふ 乙女凧 仕掛ける人を 地上に探す ◇
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◇ 降りしきる 雪のあなたの 明るみて 明日の約束 あるかもしれず ◇
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◇ 降る雪に 堰かれて歩む ふたり連れ つれないほどの 雪の冷たさ ◇
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◇ 教会は 立てり落葉の 吹きだまり 牧者は待つ 扉を開けて ◇
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◇ 寛ぎは ここだけよとし 海女の小屋 青々と海 溢れてありき ◇
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◇ 寄せ鍋を 囲めばみんな 家族とも 見えてくるなり 人の関係 ◇
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◇ 寒椿 手折りて急ぐ 宣教師 行方を追へば 病院に消ゆ ◇
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◇ 荷を負ひて 坂登る蟻 側に見て 険しき道を 辿り行く今日 ◇
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◇ 桑の実の 食はれもせずに 落ちにけり 芳醇な香は 涙にも似て ◇
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◇ シャボン玉 飛ぶ鳥餌と 勘違ひ つつけば嘴を 冷やして消ゆる ◇
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◇ すつぽりと 一つの村の 冬籠り 覆ひ来るもの 天上の雪 ◇