◇ 照らされて闇の深みへ 沈みゆく 花火の夜の人生哀歌 ◇
2016年8月のブログ記事
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◇ 湖を視野に入れつつ 走るとき 心の窓と同化してをり ◇
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◇ 見渡せばものことごとく 秋の色 微妙に変はる人の心は ◇
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◇ 蜩のこゑ呼応して 山を染め 村を包みて憂愁の夜 ◇
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◇ 日の当たる丘をめざして 飛ぶ小鳥 小鳥の下を駆ける鶏 ◇
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◇ 路地に鳴る 焼芋豆腐 聞き違へ 石焼芋へ 小鍋さしだす ◇
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◇ 風に浮き 風に没する 稲雀 稲狙ふのも 天の意志にて ◇
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◇ 草原に 夏の形見と 雲の影 ユーフォーのごと ひと日さまよふ ◇
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◇ 秋ツバメ 帰郷今日にも 澄む空を スーイスーイと 滑空さかん ◇
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◇ 去年ゐた 露店の少女 今年こず むくつけき犬 番して坐る ◇
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◇ キツツキに はじまる森の コンサート 野鳥の歌は 森から山へ ◇
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◇ 学校の 帰りにバツタ 追ふ少女 脛に切り傷 服に青汁 ◇
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◇ 赤い羽根 胸にあるうち 落ちつかず 外して出かける 買い物その他 ◇
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◇ 赤い羽根 他の胸探す 素振りして そよ風に揺れ 強風になし ◇
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◇ 赤い羽根 つける小指が 泳ぎをり 眼だけで追ふ 猫のごとくに ◇
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◇ 菊人形 伊達男ばかり 並びをり すぐ引き返す 日曜の午後 ◇
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◇ 踊る輪の 中より手招き する女 狸かもしれず 男かもしれず ◇
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◇ 秋声や 一点に向く 猫の耳 人も動物も 姿はなくて ◇
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◇ 葦切りの 体あづけて 鳴きし夏 その一本の 葦のいのちよ ◇
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◇ 赤まんま しごきて保管 する赤子 帰宅し見れば 汗にふやけて ◇
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◇ 山麓を 車流して 行きながら 未踏の記憶 よぎりて飛ばす ◇
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◇ コスモスや 家の跡地を 彩りて もとゐた猫が ふらり立ち寄る ◇
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◇ 路地を来て ピストルの音 叫ぶ声 視界に突如 運動会 ◇
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◇ 秋空を 透かす木下を 健気にも 無心にも舞ふ トンボの群れは ◇
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◇ 秋あふぎ つかふ婦人の 傍らに バス待つ紳士 面はゆげに立つ ◇
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◇ 故郷は 近くにあれど 行かぬもの 行かずに思ふ だけにするもの ◇
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◇ 先駆ける たましひありて ダイビング 目指す岩場の 白き灯台 ◇ 先駆ける たましひありて ダイビング 岩蹴る足の ややに遅れて ◇
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◇ 異様なる 緑の星か 西瓜畑 道の駅では 赤三角形 ◇
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◇ 山女魚釣りし わが山間の せせらぎに 魚影走りて いまだときめく ◇
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◇ アルプスを すぐ前にして 道の駅 西瓜切られて 赤き連峰 ◇
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◇ 近郊の川で ハゼ釣りをしていると 子供を連れた 若い夫婦が来て 泳ぎ出した 盆休みのこの時期 事情があって 帰省できなかったのだろう そう酌んで 釣り場を譲り 離れた場所に釣り糸を垂れる 釣れない 泳ぐ若い夫婦と子供の上を 旅客機が次々と 上昇していく ◇
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◇ 山歩き カナカナカナの 里に出づ 里は夕暮れ 宿はまだなし ◇
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◇ 公園に デゴイチ置かれ 乗る子供 間もなく銀杏の 落葉の海に ◇
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◇ 蜩の 声せきせきと つづきをれば 吾も小さく 木戸押し開く ◇
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◇ ぼろ傘の ごと鴉飛ぶ 秋の暮れ 世を体現する 愛すべき鳥 ◇
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◇ 蜩の 飛距離小さく なりゆきて 高くは飛ばず 遠くは飛ばず ◇
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◇ 澄む空に 白き鳥ゆく 秋の風 行先はただ 風に委ねて ◇
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◇ もの抜かれ 霊の海なり 秋の風 漂ふ雲に かたちなくして ◇
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◇ けふ下りし ことばは重し かの女〈ひと〉に 俳句結社を 起動させよと ◇
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◇ 都市に住む 男一匹 武器一つ 天から下る ことば一筋 ◇
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◇ 都市に住む 男一匹 安酒を 呷りて勇気 百倍して起つ ◇
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◇ 都市に住む 男一匹 託ち言 並べてばかりも ゐられぬ身にて ◇
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◇ 道がある 避けて通れぬ 道がある 生まれる前から ついてゐた道 ◇
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◇ 物思ひ しつつ歩める 歩道をば 後ろより自転車 チリンチリンと過ぐ ◇
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◇ 沖つ帆の 水平線を 霞みゆく 各々の夢 結ぶあたりへ ◇
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◇ 浮き草や 花を灯して 遠ざかる 卒業生を 送る心地す ◇
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◇ トンネルの 出口に青き 海見えて 走れど走れど 海に出られず ◇
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◇ 草原に 青きパラソル 逍遥す 心うつろに 定めなきまま ◇
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◇ プラタナス そよげば木陰 同化して 顔に緑の 漣が寄せ ◇
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◇ 快速の 停車する駅 安らぎへ 即座に運ぶ 一本のレール ◇