宴
◇
さっきまで妖艶に花開いていた
牡丹の花が一つ消えている。
「どうしちゃったのかしら。ここのお花、
ついさっきまで、綺麗に咲いていたのに」
貴婦人が気遣って、辺りを見回している。
どこにも花は散っていないし、枝に引っかかってもいない。
貴婦人が不思議そうに宴の席に戻っていくと、
少し離れたテーブルに牡丹花がひとつ
澄まして載っていた。
〈牡丹ちゃん、あんなところに来てたんだわ。ふらふら
彷徨って〉
婦人がそう言って花を取りに席を立とうして、足がすくんだ。
向かい合った席の紳士が、じっと牡丹を見詰めていたのだ。
◇