◇ 嗚呼ケルン 祈りも風に 崩れ落つ 石積みし者も すでに世になく ◇
korekarayukumitiのブログの新着ブログ記事
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◇ かなしかる 定めは鳥の 雲に入り 人墓に入る よしなしごとよ ◇
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◇ くしやみ出て ひばり見失ふ 大空は 声ばかりして 眩しかりけり ◇
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◇ うらぶれて 寂しき道を 選び行けば つき来るものは 朽葉赤き葉 ◇
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◇ いちはやく 小鳥きてゐる 花野にて 深呼吸して こころ整ふ ◇
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◇ 遠雷の 夜半に入りても 止まらず 明日の予定を 改めて寝ぬ ◇
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◇ 駅頭に うずくまる鳩 天使なら 翼を振って 悪魔を敲け ◇
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◇ わざはひを 益とせる神 なかりせば 人生暗黒の 淵とかはらじ ◇
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◇ 一陣の 風湧きたらば 委ぬべし 死を越え生くる 一筋の道 ◇
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◇ 雨蛙 蹲る葉に ほの近く けたたましきかな 葦切のこゑ ◇
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◇ 羽とざし 石のへ深く 眠る蝶 風に浮かべば 風に委ぬる ◇
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◇ 立つ鳥の 蹴立てし波の 静まりに 残りし鳥の 愁ひ漂ふ ◇
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◇ 暗黒を 裂きて轟く 雷の 鎮まりしとき 生木裂けたり ◇
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◇ 悪党の 最期の足掻き 見る心地 雀蜂の巣 取り払はれたり ◇
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◇ 雨の都市 青赤電車 すれ違ひ 雨もたぎちて 洗車のごとし ◇
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◇ 一つ枝に 孤高かはせみ 鎮まりて ふと呟ける 声の洩れたり ◇
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◇ 一羽とて 振り返らずに ゆく雁の 目標はただ ひとつの湖 ◇
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◇ ゆきゆきて 人みな郷を 離れ行き つひに舞ひ込む 雑草の種 ◇
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◇ あたたかき 日脚のびくる ホームにて 下りの電車 待ちてをりけり ◇
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◇ ほほづきの 懐深く 灯はともり かく我が胸に 消えぬ火のあり ◇
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◇ ほぼひと日 降りしきりし 雨上がり 晴れ上がりても 虹の来ぬ空 ◇
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◇ 教会の 鐘の響きの ゆかしければ 電車乗り継ぎ そを聴きにゆく ◇
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◇ 詫び沼に アヒル馴染みて 棲みつきぬ 白と黄の嘴 目立つばかりに ◇
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◇ つつがなく 時の移ろふ 白昼を 日脚のごとく 立つ人の見ゆ ◇
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◇ パック容り ポテトチップを 手に立てる 吾が頭中に ジャガイモの雨 ◇
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◇ ひとところ 冬日まどろむ 丘の辺に つばさ傷める 鳥来をるらし ◇
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◇ ひそかなる 音させて舞ふ 幾ひらか なかの一枚 吾に来たりて ◇
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◇ ペンギンは 魚を捕るとき 魚になる なぜ人は撃つ 銃を構へて ◇
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◇ ひと本の 樹立に歌ふ 諸鳥の さま異なれど 心はひとつ ◇
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◇ トマトもぎ 与へくれし農夫 今は亡く ふふめる真陽の ぬくみ身に沁む ◇
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◇ バイブルを かかげ駅頭に 道示す その方角の 終末時計 ◇
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◇ ふとやんで また鳴き出づる 蛙らの 心の奥を 読めぬ壮年 ◇
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◇ ただならぬ 魚のひそめる 気配して 帰路につけざる 旅先の空 ◇
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◇ せんなくて 砂に十字を 描きけり 出航前の 時の間なりき ◇
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◇ 栗の実の かさりと落ちて 鎮まりぬ 密かな かさりは 世界を移動する 報せ ◇
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◇ 青蜜柑 電車の窓に 流れ去る 色青ければ 記憶も冷えて 意識を焼かず ただ流れ去る 青蜜柑 ◇
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一房の黒葡萄が 一つの教室としたら 一粒として 欠けるもののない 黑い葡萄の一房 教室の子供の 黒く張り詰めた 瞳の連なり 一粒として 欠けたり萎んだりしないように 黒い瞳が 涙にではなく 希望に張り詰めているように 担任の教師の苦労はつづく ◇
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◇ 鬼灯をくわえ 車中の人となる さよならも言えず 手を振るばかり これも別れの哀しさか 哀しさは 尾を引いて それきり鬼灯が 嫌いになった ◇
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◇ 蜩の こゑのまさりて 沸き立てり 人住まぬ郷の 侘しき狂騒 ◇
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◇ はるばると 去年の花野に 来て見れば 白赤小鳥 無心にたはむる ◇
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◇ 日の当たる 木ぬれに栗鼠は 毛繕ひ カメラに気づかぬ 寛ぎの間 ◇
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◇ ひとところ 枯野に真日は 弾けをり 日浴びに向ふ 徒歩の鳥見ゆ ◇
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◇ トンネルを 抜くるがごとし 新生を 迎ふるがよし 悩み多き日 ◇
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◇ つばくらめ 来るなり滑空 する街は 尖塔立ちて 陽を弾きをり ◇
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◇ たらの芽を 貪りたくて 山に入る この渇望を 秘めて語るな ◇
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◇ スモッグの 都市にくすめる 紅椿 七羽の雀 親しげに寄る ◇
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◇ たなごころ 開けば中に 猫柳 がんぜなき子の いぢらしさかな ◇
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◇ はかなかる 命の花火 うれふがに 遠まきに雷は どよめいてをり ◇
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◇ ちらちらと 木漏れ日をどる 田舎道 幻影めきて 蝶の舞ひをり ◇
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◇ うらぶれて 表通りを 避けゆけば 路地に少女の 泣き腫らしをり ◇
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◇ クローバー 舌に巻取り 急く牛の 胴の片へに 慈悲の光芒 ◇
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◇ くしやみ出て 鳥見失ふ 大空は 靑ひと色に 眩しかりけり ◇
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◇ ことのはは いのちなりけり さらさらと 吹かれゆくのみの 落葉にあらず ◇
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◇ 目もあやに コスモス開く 丘に立てば 眼下の里も 満ち足りて見ゆ ◇
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◇ かくばかり 力残せる 夕日にて 今また昇り 人に元気を ◇
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◇ をとり鮎 役目解かれて 水に浮く 流れのままに 癒されゆかむ ◇
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◇ 山麓の 過疎なる郷に 立ち寄れば 衛兵のごと 向日葵が立つ ◇
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◇ 湖に 一つボールの 漂ひて 夕日に燃えつつ 小さく沖へ ◇
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◇ 何せむと 来し吾なるか ビル群の あはひに立ちて 看板仰ぐ ◇
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◇ ボーナスの 季としなれば 外交の 繁く敲きぬ 吾に職なし ◇
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◇ 囲はれの 鶴の鋭き 嘴と脚 雀のがれつつ お零れをはむ ◇
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◇ 銃音は 木霊となりて 湖わたる その漣の 色ぞかなしき ◇
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◇ 断絶を こえて昇りし 魚はあり 嶺の化石に 伝説として ◇
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◇ 浮かぶでも 沈むでもなく 蛙らは ぬるき水に浮く 手足伸ばして ◇
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◇ 薄霧の 湖畔駆けゆく 自転車の 若き女は 未だ軽装 ◇
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◇ 啄木鳥の 放棄する樹は うつろにて 虫も棲まずに 秋風の中 ◇
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◇ 国を越え 時代を越えて 乙女子の 水になふ姿 ことに美し ◇
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◇ 山川を 釣りのぼり行く 吾が影の * 長々として 蜩の声 ◇
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◇ 喘ぎつつ 山径のぼる 吾が上を * 涼しき声に 雁つらね行く ◇
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◇ この鶴は 哀しき鳥か 檻に寄る 風来の我を * 首かしげ視る ◇
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◇ 山道の リス人の目を 木に逃れ 高みへ高みへと 日の中に消ゆ ◇
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◇ 人訪はぬ 吾が階段を なにゆゑに ひしめき合ひて 落葉集へる ◇
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◇ 先立たれし 海女行商に 身を転じ 師走の街に 魚を商ふ ◇
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◇ 蜜柑皮 手に一杯に 押し広げ 太陽さんよと 示す幼子 ◇
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◇ 枯野ゆく ローカル線の 終着地 臥所(ふしど)のごとく 淡く日の照る ◇
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◇ 電線に 尾長のすいと 来て留まる 尾羽の目立ち 間なく飛び立つ ◇
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◇ 読書する 書の上を鳥の 影さして 一瞬に過ぐ 心乱され ◇
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◇ 勇ましき 姿見せむと 吠ゆる犬 主人負かすべく 外に向かひて ◇
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◇ 小鳥らは 天使のごとく 来てをりぬ 野辺の美しき もののほとりに ◇
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◇ 牧の牛 ちぶさ母乳に 張り詰めて 程なく町へ 朝の挨拶 ◇
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◇ 夏雲の はるけく行けり 野にありて なにとはなしに 佇みてをり ◇
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◇ 山越えし 一つ汽笛の 冴え返る 過疎の村への こころざしとし ◇
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◇ 風吹けば 乱るるもみぢ 山川に 映るも散るも ところ狭しまで ◇
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◇ 海原に 赤白ふたつ 帆の浮きて 風のまにまに つかずはなれず ◇
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◇ 羽とざし 石の上深く 眠る蝶 風に浮かべば 風に委ねて ◇
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◇ まり一つ 置き忘れたる どこの子か 蹴りたくはあり 蹴りたくはなし ◇
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◇ 飽和せる ものの爆発 するごとし 花火弾けて 夜は白々し ◇
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◇ 陶器焼く 窯はありけり 密かにも けものの道は 寄りてありけり ◇
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◇ 地獄見て 帰り来たれば 飼猫は 喉鳴らしつつ 三日まどろむ ◇
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◇ 雑踏に 数種のビラが 飛び交ひて 一粒の種 福音が舞ふ ◇
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◇ 落葉焚く 里の夕ぐれ 際立ちて 牛も瞳に 火をいれて立つ ◇
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◇ 裸木に ひとつ来てゐる はぐれ鳩 飛び立つ時を はかりつつをり ◇
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◇ 群れなして 渡れば怖く ない式の 時代に生きて 吾等かなしも ◇
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◇ なにがなし 胸の塞がる 思ひきぬ 枯野ひろごる 真昼なりけり ◇
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◇ 子を天に 捧げむとてや コフノトリ 尖塔に巣を 営みをりぬ ◇
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◇ 銃ならぬ カメラなれども 野の鳥は 声を潜めて 呼吸してをり ◇
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◇ 海女の子は 母の沈むを 喜ばず 浮かび出る母 朝日のごとし ◇
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◇ 草の上の 露を啄ばむ 野の鳥の くちばし上げて 飲むさまもよし ◇
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◇ 山峡の 水車健気に めぐりをり 人住まぬ里の 清き流れに ◇