korekarayukumitiのブログ

長きにわたり探してきた道は、天から降りてくる梯子を
一歩一歩上っていくことだった。

野兎


春の野原では、
寛げるはずの野兎が、
どこか慌て気味に、
見え隠れしている。
長閑な春の日といえども、
敵に全身を曝しては、いられないのだろう。
小心もので、臆病な、野の生きもの。


その兎が、
峡谷の十メートルの激流を、
跳んで渡った。
兎が数十秒前までいた川岸には
五六匹の野犬が、
いかにも無念そうに、
兎が跳んで渡った岸と、その先に小さく
薄れゆく後姿を、同じ視野に捉えて
立っている。
逃げる野兎と追う野犬
しかしここでは
逃げる勝者の野兎と
追う敗者の野犬たち


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