◇ つばくらめ 来るなり滑空 する街は 尖塔立ちて 陽を弾きをり ◇
2016年10月のブログ記事
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◇ たらの芽を 貪りたくて 山に入る この渇望を 秘めて語るな ◇
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◇ スモッグの 都市にくすめる 紅椿 七羽の雀 親しげに寄る ◇
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◇ たなごころ 開けば中に 猫柳 がんぜなき子の いぢらしさかな ◇
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◇ はかなかる 命の花火 うれふがに 遠まきに雷は どよめいてをり ◇
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◇ ちらちらと 木漏れ日をどる 田舎道 幻影めきて 蝶の舞ひをり ◇
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◇ うらぶれて 表通りを 避けゆけば 路地に少女の 泣き腫らしをり ◇
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◇ クローバー 舌に巻取り 急く牛の 胴の片へに 慈悲の光芒 ◇
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◇ くしやみ出て 鳥見失ふ 大空は 靑ひと色に 眩しかりけり ◇
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◇ ことのはは いのちなりけり さらさらと 吹かれゆくのみの 落葉にあらず ◇
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◇ 目もあやに コスモス開く 丘に立てば 眼下の里も 満ち足りて見ゆ ◇
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◇ かくばかり 力残せる 夕日にて 今また昇り 人に元気を ◇
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◇ をとり鮎 役目解かれて 水に浮く 流れのままに 癒されゆかむ ◇
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◇ 山麓の 過疎なる郷に 立ち寄れば 衛兵のごと 向日葵が立つ ◇
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◇ 湖に 一つボールの 漂ひて 夕日に燃えつつ 小さく沖へ ◇
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◇ 何せむと 来し吾なるか ビル群の あはひに立ちて 看板仰ぐ ◇
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◇ ボーナスの 季としなれば 外交の 繁く敲きぬ 吾に職なし ◇
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◇ 囲はれの 鶴の鋭き 嘴と脚 雀のがれつつ お零れをはむ ◇
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◇ 銃音は 木霊となりて 湖わたる その漣の 色ぞかなしき ◇
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◇ 断絶を こえて昇りし 魚はあり 嶺の化石に 伝説として ◇
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◇ 浮かぶでも 沈むでもなく 蛙らは ぬるき水に浮く 手足伸ばして ◇
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◇ 薄霧の 湖畔駆けゆく 自転車の 若き女は 未だ軽装 ◇
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◇ 啄木鳥の 放棄する樹は うつろにて 虫も棲まずに 秋風の中 ◇
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◇ 国を越え 時代を越えて 乙女子の 水になふ姿 ことに美し ◇
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◇ 山川を 釣りのぼり行く 吾が影の * 長々として 蜩の声 ◇
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◇ 喘ぎつつ 山径のぼる 吾が上を * 涼しき声に 雁つらね行く ◇
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◇ この鶴は 哀しき鳥か 檻に寄る 風来の我を * 首かしげ視る ◇
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◇ 山道の リス人の目を 木に逃れ 高みへ高みへと 日の中に消ゆ ◇
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◇ 人訪はぬ 吾が階段を なにゆゑに ひしめき合ひて 落葉集へる ◇
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◇ 先立たれし 海女行商に 身を転じ 師走の街に 魚を商ふ ◇
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◇ 蜜柑皮 手に一杯に 押し広げ 太陽さんよと 示す幼子 ◇
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◇ 枯野ゆく ローカル線の 終着地 臥所(ふしど)のごとく 淡く日の照る ◇
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◇ 電線に 尾長のすいと 来て留まる 尾羽の目立ち 間なく飛び立つ ◇
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◇ 読書する 書の上を鳥の 影さして 一瞬に過ぐ 心乱され ◇
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◇ 勇ましき 姿見せむと 吠ゆる犬 主人負かすべく 外に向かひて ◇
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◇ 小鳥らは 天使のごとく 来てをりぬ 野辺の美しき もののほとりに ◇
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◇ 牧の牛 ちぶさ母乳に 張り詰めて 程なく町へ 朝の挨拶 ◇
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◇ 夏雲の はるけく行けり 野にありて なにとはなしに 佇みてをり ◇
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◇ 山越えし 一つ汽笛の 冴え返る 過疎の村への こころざしとし ◇
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◇ 風吹けば 乱るるもみぢ 山川に 映るも散るも ところ狭しまで ◇
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◇ 海原に 赤白ふたつ 帆の浮きて 風のまにまに つかずはなれず ◇
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◇ 羽とざし 石の上深く 眠る蝶 風に浮かべば 風に委ねて ◇
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◇ まり一つ 置き忘れたる どこの子か 蹴りたくはあり 蹴りたくはなし ◇
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◇ 飽和せる ものの爆発 するごとし 花火弾けて 夜は白々し ◇
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◇ 陶器焼く 窯はありけり 密かにも けものの道は 寄りてありけり ◇
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◇ 地獄見て 帰り来たれば 飼猫は 喉鳴らしつつ 三日まどろむ ◇
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◇ 雑踏に 数種のビラが 飛び交ひて 一粒の種 福音が舞ふ ◇
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◇ 落葉焚く 里の夕ぐれ 際立ちて 牛も瞳に 火をいれて立つ ◇
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◇ 裸木に ひとつ来てゐる はぐれ鳩 飛び立つ時を はかりつつをり ◇
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◇ 群れなして 渡れば怖く ない式の 時代に生きて 吾等かなしも ◇