◇ カイツブリ 水潜りする 古沼にて 鯉は水面に 日を浴びに浮く ◇
2016年11月のブログ記事
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◇ 秋の山 落葉鳴らして 山鳥は 駆けて行くなり 貌を赤らめ ◇
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◇ うつし世の 歪んで映る 氷柱かな そを見る吾も 二重に歪み ◇
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◇ カケス飛ぶ 辺りは里の 日頃にて 変哲もなき 山峡の村 ◇
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◇ 怖い顔 誰が作つた 雪だるま 児童公園 雪降り積もる ◇
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◇ 赤裸々に ひび割れるごと 石榴の実 亡き母の手の あかぎれ想ふ ◇
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◇ 小心か または傲慢 蟷螂の 岩転げても 鎌もたげたり ◇
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◇ 夜となれば 淡くも光る 薄かな ささやかなれど 生きたあかしに ◇
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◇ 大根の 持ち重りして 道を急く 重き分だけ 瑞々しくて ◇
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◇ たちまちに 雪に覆はれ 粛々と 冬の木立を 小げら打つ音 ◇ ◇
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◇ たどたどし アヒルの陸の 二歩三歩 稚児がそを見て 指さし笑ふ ◇
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◇ 雪掻きの 慌てふためく 新世界 昨日の大地 いづこにもなく ◇
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◇ 雪達磨 木上の鴉 攻撃す 鬱憤晴らし 鳥にもありて ◇
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◇ 埋火の 怒りしゆつらい 無神論 己のミスで 炭火を襟に ◇
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◇ 洪水の ごとく落葉の 降る夜は 人も家畜も 鎮もりをりぬ ◇
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◇ 冬木いま もつとも易き 形して ほかに差し出す 何ものもなし ◇
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◇ 海暮れて 鴨万軍の 寄せてをり 逃げ腰となる 大和の諸神 ◇
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◇ 心病む 休職中の かの人は 都市公園の ベンチに日浴ぶ ◇
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◇ 寒鯉の 寝ては起こさる 河の土手 靴音高く ジョギングの行く ◇
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◇ ビル群の 狭間に霞む 寒椿 オフイスガールの 夢に灯りぬ ◇
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◇ 視界消し 山間の村 ふゆごもり 立つ煙突に 煙も見えず ◇
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◇ いづこまで 人後につける 落葉かな いま亡き人の 気振りのやうに ◇
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◇ 褐色に 枯れゆくばかり この季節 晩秋といふ 名にふさはしく ◇
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◇ 音高く 雀落葉に 紛れけり 鴉も猫も 怖れて寄らず ◇
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◇ 枯草に 安らぎて知る 日のかほり 鳥も来てをり 保養のために ◇
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◇ 生捕りの 熊我を撃たれ 落葉する 五日飼はれて 山に放たる ◇
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◇ 都市に住む 椿女の かの人は 都市に沈みて 赤き灯ともす ◇
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◇ 紅椿 花の乏しき この折を 故郷持たぬ 人を励まし ◇
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◇ 寒椿 都市の埃を 身に浴びて 世の片隅に 慎ましく咲く ◇
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◇ 枯れ枯れて これより先は 金の道 道といふより 日の当たる丘 ◇
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◇ 静やかに 一夜に天の 雪おほひ 人も車も 立ち尽くす朝 ◇
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◇ 小春日に 鳥の古巣を 見つけたり 今巣立ちした ばかりのやうに ◇
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◇ 彷徨ひて ふと十字路の 年の暮 上向く他に 行路はなくて ◇
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◇ 地を蹴りて 浮上するなり 丹頂は 翼広げて 天上を舞ふ ◇
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◇ 綿虫の 雪装ひて 舞ふ空を 口開けて飛ぶ 鳥の賢さ ◇
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◇ 地を変へて 凛として立つ 銀杏の樹 この金色は 何のしるしか ◇
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◇ 出されずに 遂に枯野の 古葉書 解読可能の 心のままに ◇
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◇ 雪の上に 辿り辿りて 足の跡 鳥か獣か 識別つかず ◇
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◇ 初時雨 万象孤児の ごと欝ぎ 冬へと向かふ 時の狭間に ◇
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◇ 冬鴎 舞ふ海面は 鉛色 鴎の羽根も 鉛色して ◇
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◇ 雪降れば 雪に佇む 迷ひ鳩 鳩舎日増しに 遠くなりゆき ◇
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◇ 拾ひても 実なしに進む 寒雀 口開く子に 親雀啼く ◇
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◇ 雪の降る 明るき空に 鐘の音 雪と同じく 天上のもの ◇
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◇ 懐に 飛び込んで来る バツタあり 人の体は 尊い行火 ◇
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◇ 鈴鳴らし 橇ゆく道の 延々と 地にとどまるか 天へ抜けるか ◇
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◇ 物干しに 互ひ違ひに ゐる鳩の いとも容易く 身を入れ替へり ◇
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◇ 冬の日の ホームに射して ゐるなかを 人のみならず 鳩も雀も ◇
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◇ 柚子の実の 湯に委ねつつ 人に来る 人なつこさの かなしかりけり ◇
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◇ 終着駅 安心もあり 枕木に 土鳩と鼠 並び餌食む ◇